5月です

Tetsuo Abe

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。
いよいよ5月です。これから梅雨入りまでのこの季節は、一番過ごしやすい季節です。朝晩散歩していても感じる風は、すがすがしく、ちょっとした距離でも遠回りして歩きたくなります。最近は健康のためにも時間が空くと少し街歩きをしています。少しいつもと違う街並みを歩くだけでもリフレッシュされる気がします。こうした、些細なことに感動するのも年齢を感じてしまいます。若い時には、前ばかり見ていて周りの景色を楽しむ余裕がなかった気がします。

先日、仕事と遊びを兼ねて京都に行く機会がありました。一泊二日で講演会の参加もあったので慌ただしい旅でしたが、京都はすっかり元の観光客が戻っている感がありました。それでも、タクシー運転手さんに聞くと、以前と比べて団体客がまだ戻っていないとのことで、そう言われてみると駐車場を見ても観光バスは皆無でした。

新緑の古都はどこに行っても圧巻の景色です。そこここに、歴史にまつわる建造物があり、こうした景色を秀吉や信長たちも眺めたのかと思うと感無量になります。今回は、以前あまりいっていなかった嵐山や嵯峨野まで足を延ばしました。金閣や銀閣、清水寺といった”THE京都”といった観光地も圧巻で感動するのですが、私は京都の何気ないお寺や庵で過ごすことを楽しみにしています。今回の訪問の中では常寂光寺の風情には本当に感動しました。常寂光寺の開創は慶長年間といいますから、まさに関ケ原の合戦のころです。開山した上人には加藤清正や小早川秀秋も帰依したと解説にありました。あまり観光客もいず、その静かな佇まいはそこにいるだけで心が洗われます。次回京都に行く機会が又あれば、もっとこのお寺でゆっくり時間を過ごしたいと思いました。地元の方なのか入り口で「今日もまた来てしまいました」と係員に声をかけている方がいましたが、それも納得の居心地の良さでした。

当院でも実施している、マインドフルネスは、その起源は禅にあると思いますが、こうした静寂な空気の中で瞑想すると本当に効果を実感します。私は禅の心得はありませんが、我流で瞑想するだけでも心が整う感じがしました。

うつの治療には薬物療法も有効ですが、こうした瞑想を組み合わせることでさらにその効果を高められると思います。美しく整えられた庭を見ながら瞑想にふけることの精神への効果を、中世のころから気づいていた日本人の知恵には本当に感心させられます。

当院では、リワークデイケアのプログラムの一環でマインドフルネスを取り入れております。リワークデイケアとは、精神疾患で長期休職している方や複数回休職している方を対象に、復職への支援を行うプログラムです。長期休職や複数回の休職の方は、復職するにあたり不安が強かったり、また休職してしまう恐れも多かったりするものです。こうしたことを防ぐために実施しているのがリワークデイケアです。当院では疑似的なオフィス的環境を用意し、毎日10名前後の方が復職訓練に励んでおられます。リワークデイケアでは、マインドフルネスだけではなくうつ状態に対する認知療法やSSTあるいは個別作業などを行っています。こうしたプログラムを通じて、復職後も再発を防ぐ方法を身に着けていただいたり、復職に備えてて生活リズムを整えたりするなど様々な効果が期待されます。現在休職中の方で復職に不安がある方やプログラム参加希望の方は担当医や受付窓口にぜひご相談ください。

コロナ禍も一段落し、少し旅行もしやすくなってきました。これからは、自分の精神衛生のためにも京都や奈良、鎌倉など歴史を感じられる場所に足を延ばして、また瞑想にふけり心を整えたいと思っています。