梅雨入りです

Tetsuo Abe

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梅雨に入りました。
晴れる日が少なく湿度も高いこの季節はやはり苦手です。毎年同じことを言っていると思いますが、この季節をいかに乗り越えるのか思い悩んでしまいます。この季節になるたびにいろいろな工夫を凝らすのですが、どれも妙案はなく思いつかないままに時間がたってしまい気が付くと梅雨明けになっていることを繰り返しております。

最近の話題はサミットと歌舞伎俳優の自殺騒ぎでしょう。G7は、ウクライナのゼレンスキー大統領が電撃的に来日したということで話題はウクライナ情勢一色となってしまいました。しかし、被爆地広島に侵略を受けている当事国の元首が訪れるというのは象徴的なシーンでした。被爆した被害者たちと今のウクライナ国民がオーバーラップして見え、この演出の巧妙さはさすがゼレンスキー大統領と感心しました。しかし、このG7にかなりの危険を冒してでも、直接の対話にウクライナの大統領が駆けつけてくるのをみても、やはり直接対面して話をすることの大切さ、リモードでは伝えられない情報量の多さを実感します。

これはわれわれの診療にも相通じるものがあります。コロナ禍を通じて遠隔診療の必要性が叫ばれていましたが、やはり対面診療に勝るものはないというのが感想です。短い面談であっても、直接会って状態を診させていただき話を伺うのと電話越しで状態を伺うのとではその情報量に格段の差があるということです。カウンセリングも部屋越しのリモートで行ってきましたが、この4月からは直接面接に戻しました。また、診療でも遠隔診療や電話でのお薬の処方は実施してきましたが、今後はコロナの特例が廃止となり電話での診察でお薬を処方することができなくなります。厚労省の方針なので一医療機関としてはルールを守らなくてはなりません。ご理解ご協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。

話は変わり、歌舞伎役者の自殺の事件ですが、向精神薬を大量に飲んで自殺を図ったとありました。しかし、わたくしの40年近い精神科医としての経験からすると、過量服薬で亡くなったケースはほとんどないといっても過言ではありません。不幸にして亡くなったケースはゼロとは言いませんが、たとえば本人が衰弱していたなど種々の複合的要因が重ならないと簡単には死には至りません。救急医の先生がテレビコメントでバケツ一杯くらい飲まないとまず死ねないといっていましたが、同感です。一回の処方分をすべて飲んだというケースも経験しましたが、24時間後には回復されていました。この事件が、向精神薬は危険、大量に飲めば死ねるといった誤ったメッセージにつながらないか懸念されます。

この事件は、老々介護といった介護問題も誘因の一つとされています。我々の外来でも介護うつや、家族が介護に疲れて不幸にして虐待ともいわれかねない状態に陥ったという事例を経験します。この点ではこの事件は他人事とは思えません。推測ですが、あまりにも有名人すぎて気軽に包括支援センターや我々のような認知症疾患医療センターに相談できなかったのかもしれません。介護は家族のみで何とかしようと思わないほうがいいと思います。できるだけ自分に余力を残し頼れる制度や介護サービスは利用するといった方針で臨むことがいいと思います。もし介護などでお悩みのことがあれば、当院では月に一回オレンジカフェを開催しておりますし、また相談員による相談は随時行っております。介護についてお悩みがあるようでしたら家族のみで悩まず専門家に相談することをお勧めします。