倚りかからず
こんにちは、院長の阿部哲夫です。
最近は、東京も紅葉し少し肌寒い日が増えてきました。12月になり冬の訪れをと言いたいところですが、最近はやりの温暖化のためか結構暖かい日が多く銀杏にまだ緑が残っていて異常気象を実感する毎日です。
以前テレビニュースは比較的好きでよく見ていましたが、ウクライナの戦争をはじめ最近は嫌な報道ばかりで避けるようになってしまいました。兵庫県知事選挙やアメリカ大統領選挙など、勝つためには何でもやる、SNSをつかって嘘の情報でも何でも流しても勝てば官軍。いままで悪くはないなと思ってきた民主主義という制度に対する信頼が自分の中で揺らいでいます。本当にみんなこれでいいの?と訊きたくなります。自分の殻にこもるのはあまりよくないのですが、好きな音楽を聞いたり好きな本を読んだりして過ごすことが増えてきました。
そんな中で私のお気に入りの音楽は、坂本龍一や忌野清志郎など少し古めの音楽です。とくに忌野清志郎は、その歌詞の中に彼の思想や生き様などが込められていて聞くたびに勇気づけられます。発売禁止になろうと主張するものは主張する。事なかれ主義におちいらずに、思ったことはきちんと表現する。今でも彼の音楽が多くのファンを持っていることは納得です。
先日もデイケアの文化祭ともいうべき「ファンファン祭り」で清志郎率いるタイマーズの曲を演奏したのも記憶に新しいところです。彼の曲の中で一番好きなのは、ジョンレノンの「イマジン」の日本語カバーです。国境や宗教、政治思想は人間が考えた概念にしかすぎません。地球や人間以外にとっては何の価値もないものであることを実感させてくれる歌詞です。理想主義といってしまえばそれまでですが、皆が同じように考えれば実現するのだと彼は叫び続けます。その当時(彼は故人です)でも、彼は戦争がいまだに無くならないことを嘆いていましたが、今の状況を見て彼はどう感じるのでしょう
か?そして生きていたら、なにを伝えてくれたのでしょうか?
そして本の中で最近愛読しているのは、茨木のり子さんの詩集です。最近は老眼が進行し長編の文学を読む気力が失せてきていますが、詩集であれば短時間で読めますし字も大きめなのでつい手に取ってしまいます。有名な詩人なのでご存知の方も多いかと思いますが、実は彼女は帝国女子医学薬学理学専門学校(現東邦大学)の薬学部卒業でご主人も医者という医療関係者です。「倚(よ)りかからず」という詩の中に「もはやいかなる権威に倚りかかりたくない ながく生きて 心底学んだのはそれくらい」という一節がありますが、これは本当に心にしみました。「自分の感受性くらい」という彼女の有名な詩がありますが、その思想に通じるものを感じます。
いまは、SNSにしてもマスコミ報道にしても情報の信頼性が揺らいでいる時代だと思います。こうした時こそ自分の感受性を信じ、自分が信頼している人の言葉に耳を傾けるべきだと感じています。情報を鵜呑みにするのではなく、誰が言っているのかその情報は信じるに値するのかを吟味する必要があると思っています。そのためには自分の感受性を磨いていくことが大事なのでしょう。
「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」
(茨木のり子 自分の感受性くらい より)