猫の鳴き声と喃語

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20歳から猫とともに暮らし続け、現在も猫3匹と同居している精神保健福祉士の梅津です。
ご存知と思いますが、猫はよく鳴きます。高校性の頃、夜中に野良猫が鳴く声が、人間の赤ん坊の声のように聞こえて外に見に行ったことがあるくらいです。このときはオス猫の縄張り争いだったとは思いますが、おそらく普段はメス猫のほうが鳴く印象です。

ネコ科の野生動物は鳴かず、イエネコだけが良く鳴くらしいですが、考えてみると、こんなに人間とのコミュニケーションのために音を発する生き物が他にいるでしょうか。インコや犬のように、近い形で鳴く生き物はいますが、猫の鳴き方はちょっと違うんですよね。もうちょっと人間に近いというか、言うなれば、人間の赤ちゃんが発する喃語(なんご)に近い気がします。

ジャック・ラカン(哲学者、精神科医)によると、幼児が発する喃語は身体的な言葉であり、身体的な喜びとの結びつきが強いそうです。子供はまだ自分にしかわからないような、言語になっていない呼びかけによって、空腹が満たされ、母の優しい返答や身体的な接触に包まれる。喃語はこの経験を喜びの源泉として機能しているというのです。

そして、いつまでも喃語で済むはずもなく、人は、他者あるいは社会とより良く意思疎通するために「きちんとした」言葉を体得します。それとともに、喃語の身体的な喜びは喪失していくとラカンは考えました。私たちは、社会性を練り込まられている「きちんとした」言葉のなかを「大人として」生きていますが、もし、その忘れられた喜びである喃語を思い出させてくれるのが猫の鳴き声だったとしたら、人間にとって猫は、最高に愛らしいパートナーとなるのではないでしょうか。

そんなこんなで、膝に乗ってニャアニャアとなく我が家の唯一のメス猫「せと」は、とにかくかわいいです。リモート会議や仕事の電話という圧倒的に入ってきてほしくない場面にこそ、自分の発言をしたがります。人間同士の会話に加わりたいのもあるかもしれないですが、その鳴き声が「いかに人間を惹きつけるか」をちゃんと知ってるんじゃないかと思ってしまうのです。

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