愛と微笑みを

Tetsuo Abe

In Posted

こんにちは、院長の阿部哲夫です。
毎日殺人的な暑さですね。昼間に外出すると本当に肌を焼かれているように感じます。32度で暑いといっていた、20世紀の夏が懐かしく思い出されます。これほど暑いと、屋外のプールや海で泳ぐことなど考えられません。我々がマリンスポーツに興じていた80年代や90年代の夏は今ほど過酷ではなかったとつくづく思います。

今の最大の話題は、ビッグモーター事件でしょう。修理すべき車をさらに傷つけて修理代を稼ぐ、こんなことをしている会社があったとは驚きです。我々が患者さんの病気を改善することがやりがいと感じているのと同様に、おそらく修理部門の担当者は故障したり事故で傷ついたりした車が修理されて直ることがやりがいだったと思います。そうした職員の気持ちを踏みにじって、車をさらに傷つけるといった不正行為に走らせた、経営陣の責任は重いと思います。社長が記者会見で、ゴルフボールを使って車をへこませていたことはゴルフ愛好者を冒瀆(ぼうとく)していると話していましたが、こうした不正行為をさせていた会社の体質そのものが、全ての車好きに対する冒瀆にほかなりません。ビッグモーターの修理部門で働いていた職員は、車が好きで車にかかわる仕事をしたいと思って入社してきたに違いありません。車が好きで、壊れた車を修理することにかかわる仕事がしたいと思っていた人達に儲けるためとはいえ車を傷つけさせる、こうした拝金主義は多くの職員のモラルを低下させたのではないでしょうか?自分の仕事が世の中の役に立つのではなくむしろ多くのユーザーを裏切ることになってしまう、ひいては社会に悪をもたらしてしまう、社会人として職業人としてこれほど悲しいことはないと思います。

わたくし自身、中学生のころにロッキード事件を体験しました。全日空と丸紅という一流企業と時の総理大臣が汚職事件を起こしたわけですが、このときこの事件にかかわった社員の多くは会社のためにといろいろな工作をしたに違いありません。それが結果としては、社会に悪をもたらす行為だった。この事件を通じて、中学生の私は医師になろうと思いました。医師になれば、意図せずに社会にとって悪をもたらすことに手を染めずに済むと思ったからです。ビッグモーターの社員もまさか自分たちが会社のために悪に手を染めなくてはいけないとは夢にも思わなかったと思います。

こうしたことはなぜ起こるのでしょう。もちろん利益を追求することはいけないことではありません。しかしそこには理念が必要です。渋沢栄一も常に「論語とソロバン」ということを唱えていたそうです。つまり単なる金儲けはいけない、そこには理念や思想が伴っていないといけない、つまり社会貢献が必要ということです。ソニーがまだ東京通信工業という町工場に過ぎない時代にその設立趣意書には、すでに高い理想を掲げていたというのは有名な話です。それに倣ったわけではありませんが、表題の「愛と微笑みを」は当法人の理念を象徴する言葉です。

「愛と微笑みを」あべクリニックは、精神障害を持つ方々に愛情をもってかかわり、その活動を通じて微笑みを取り戻していただけるようなクリニックをめざします

これが当院の理念です。こうした理念や初心を忘れずに日々活動を重ねていかなければいけない、これがわたくしのビックモーター事件を通じて得た教訓です。皆さんはこの事件を通じて何を感じましたか?