メダルか命か

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。

楽しみにしていたGWも終わり、6月です。梅雨の季節が迫ってきています。毎年梅雨をいかに楽しく過ごすかが悩みの一つですが、今年は大丈夫です。なぜなら、コロナ禍で巣籠り生活にもだいぶ慣れて、巣籠りしながらの楽しみのメニューがだいぶ増えてきたからです。雨の中の読書や音楽鑑賞、家族でボードゲームを楽しむ、いろいろな材料を買い込んで料理を作る、ネットで映画鑑賞やウェブ飲み会などがこの1年で学んだ室内での楽しみです。

今の一番の話題は何と言ってもコロナ予防のためのワクチン接種です。診察中に、ワクチンを打ってもいいかと尋ねられることが徐々に増えてきました。現在は65歳以上の高齢者が対象ですが、次には基礎疾患を有する方への優先接種に対象が移ります。この優先接種の対象に精神疾患が含まれていることを皆さんご存知でしょうか?具体的には精神保健福祉手帳を有する方や、自立支援医療を申請して医療費の減免措置をうけている方が対象となります。このほかでは、睡眠時無呼吸症候群でCPAPの治療を受けている方も対象となります。したがって当院にお罹りの多くの方が対象となると思います。

ワクチンを打つべきなのかどうか迷われている方も多いと思います。報道によれば副反応がかなりの割合ででるといわれていましたし、実際に接種した方の経験談や我々スタッフの経験からも接種後の発熱や倦怠感、肩の痛みなどの頻度はかなり高いと思います。発熱して翌日仕事ができない方なども少なくはありません。しかしその一方、こうした副反応からはほぼ全員が短期間で回復することも事実です。私はこうした副反応があったとしてもできればワクチンは打った方がいいと思っています。なぜならワクチン接種は自分のためだけではないからです。もちろん接種すれば自分がかかったりあるいは重症化するリスクを減らすことができます。それも大事ですが、それよりも自分がワクチンを打つことで自分が感染して他人にウイルスをうつす可能性が低くなることが大事だと思っています。これまでは、自分が媒介となってコロナウイルス感染症を他人に移すリスクを心配しながらの診療でしたが、これからはその重荷を少し下ろすことができるのではないかと思っています。

もう一つの話題は、オリンピックを開催すべきかどうかでしょう。今の状況では、観客を入れての開催はほぼ困難だと思っています。しかし無観客で実施したとしても、外国から多くのスポンサー関係者やスポーツ団体の役員が大挙して訪日します。選手自体は選手村に隔離できるかもしれませんが、この数万人に及ぶと思われる関係者に関して行動制限することはかなり困難だと思います。今コロナ最前線で戦っている医療従事者の疲労はピークに達しているのではと思います。また一部地域では救急でかかろうとしても受け入れ先が見つからないといった医療崩壊も起き、救える命も救えない状況です。こうした状況下でオリン ピックを強行するのは、かなりの命を犠牲にすることになると思います。それでもオリンピックを実行すべきというIOCの役員や政府関係者の発言を聞くと、お金や自分たちの名誉のためには命の犠牲もやむを得ないといっているようにしか聞こえません。なぜもっと早い段階で医師会や看護協会などの業界団体が反対の声明を出さないのか、やはり政権に忖度しているとしか思えません。オリンピックが純粋なスポーツの祭典とこれまで信じてきましたが、オリンピックは単なるスポーツビジネスの一つに過ぎなかったのだと幻滅してしまいました。こうした実態を知ってしまうとスポーツ選手がいくら純粋に努力を重ねた結果を示したとしても、純粋に応援できなくなってしまっていることに気づきます。ここでもし強行され国内の感染が再拡大でもしようものなら、今後オリンピックが失う信用やブランドイメージの棄損はお金では買えないあるいは取り返しのつかない損失になるのかもしれません。スポーツは心身 を鍛え健康を増進するものだからこそ価値があるものであって、他人の健康を犠牲にして成り立つものではないと思うのですが、皆さんはどうお考えでしょうか?

Photo by Kyle Dias on Unsplash