もうすぐ冬です。

Tetsuo Abe

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。
11月ともなると、都内も紅葉し風も冷たくなります。秋というより冬の気配を感じそろそろコートをクローゼットから出さなくてはいけません。しかし、コロナになってからは、夜の会合や食事会もなく、コートを着て夜で歩く機会は激減しています。通勤も自転車になっているので、パーカーにフリースといったラフな格好が定番になってしまい、ことしもカジュアル系以外の冬物の衣類を買いに行くのはお預けかもしれません。

10月29日土曜日に、あべクリニック東京都認知症疾患医療センターが主催の、当事者と家族の相談会が、ふらっと日暮里で開催されました。主に認知症の方を介護しているご家族が相談に見えました。相談に回答するのは、私や当院のケースワーカー、看護師だけではなく、地域包括支援センターの相談員や荒川区高齢者福祉課の職員、そして認知症の家族会「銀の杖」のメンバーの方々です。いずれのご家族も、介護に関して深刻に悩んでおり、認知症介護の問題の奥深さを知る貴重な機会となりました。日頃、認知症ご本人の診療は行っていますが、限られた診察時間内では介護での苦労の実際まで伺うことはできませんでした。「介護の際に本人が強い抵抗を示すために、なかなか介護がうまくいかない」という話を切々と訴える方や、「家庭内介護を長年継続してきたが限界に達したと感じている。施設に入れるべきかどうか悩んでいる」といったような切実な悩みの相談などがありました。

我々医療者は、こうした介護については知識レベルでは詳しくても、介護の実際については経験が豊富とは言えません。むしろ、今現在介護で苦労されている相談者のほうが、本当の介護を知っているとさえ言えます。こうした場面で、現実的かつ具体的なアドバイスを頂けたのは何と言っても「銀の杖」メンバーの方々です。実際長年介護で苦労されて来たご家族の発言は一つ一つが実践に裏付けされているだけに非常に重みと説得力があるものでした。介護への抵抗が激しい認知症の方には、「しばらく間隔をあけて感情が収まったころにまた再度やってみたほうがいい」などの言葉には、ただ「怒らないでやさしく接しましょう」といったきれいごとではない介護の実際から出た工夫や努力が感じられました。

もちろん専門家の意見も大事です、病態によってはこうした興奮が薬物である程度はコントロールできることやショートステイを実際利用するにはどうしたらいいかなど、医療介護の専門家からのアドバイスもありとても有意義な相談会となりました。医師、看護師、ケアマネージャーだけではなく、包括支援センター職員や区の高齢者福祉課職員や家族会のメンバーまで一堂に会する家族相談会は他にはなく貴重だと思いました。年に一回の開催ではありますが、また来年も実施する予定ですので、認知症介護でお悩みの方は是非ご参加いただければと思います。この相談会だけではなく、当院では毎月第二土曜日の午後にオレンジカフェ(認知症カフェ)を実施しておりそこでも介護の相談をしていただくことも可能です。お急ぎの相談がある方はぜひその機会もご利用ください。

このほか当院は認知症疾患医療センターとして、医療介護に関する講演会を10月27日に実施しました。この会も今年で第4回となり荒川区の認知症医療や介護にかかわる方への講演会として定着してきました。今年は「高齢者に寄り添う漢方薬」という題で群馬県伊勢崎市の大井戸診療所理事長大澤誠先生に講演を実施していただきました。大澤先生は診療所だけではなく、訪問看護ステーションやグループホーム、高齢者デイサービス、地域包括支援センターなどを運営する法人の理事長でもあります。認知症医療に漢方薬治療をいかに取り入れるかといった内容だけではなく高齢者をチームでいかに支えていくかといった実践も含め講演していただきました。この講演会はコロナ前は地域の交流会も兼ねて実施しており、区内の顔の見える関係作りに一役かっていたと思います。これからも高齢化が進み認知症の治療介護の問題はますます課題が増えていくと思います。当院でも、こうした講演会による啓蒙活動をはじめ訪問診療や訪問看護の充実など認知症疾患医療センターとしてのの機能を拡大して対応していく予定です。これからも当院のこうした活動にご協力をよろしくお願いいたします。