鬼は外

Tetsuo Abe

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こんにちは、阿部哲夫です。

毎日寒い日が続きます。これほど寒いと体も縮こまり気分も下がりますね。さすがにこれだけ寒いと外出も億劫になります。2月と言えば節分です。節分は立春の前日に邪気を払い無病息災を祈る行事だそうです。今年は2月3日金曜日です。立春を迎えるということは、待ち遠しい春の訪れはもうすぐです。この寒さに耐えるのも、もう少しの辛抱だと思うと少し気分が上がります。恵方巻でも食べながら春の訪れの兆しを探してみようと思います。

待ち遠しいといえば、なんといっても新型コロナ感染症の収束です。先日の政府の発表では、5月のゴールデンウイーク明けには現在の2類から5類への引き下げをすることが決定したとのことです。ようやく日常の生活を取り戻せるのではと期待しています。しかし、一方では、感染者数も減ってはいても依然ゼロに近づいているとはいえず、死亡者数も少なからずあるようです。このため、5類となってもあまり手放しでは喜べないのではというのが実感です。5類となって厳格な隔離などは緩和されインフルエンザ並みとなるのでしょうが、反動で感染が急増という事態もないとは言えません。豆まきでコロナが退散するといいのですが、そうはいかないと思います。5月以降も当院では、待合室でのマスク着用など従来通りの感染対策を継続し、皆様にもご協力をお願いしたいと思っています。

もう一つの医学的話題は、アメリカやヨーロッパでアルツハイマー型認知症に対する新薬が認可されたことでしょう。レカネマブという薬ですが、アルツハイマー型認知症の原因となっているアミロイドβというたんぱくの蓄積を抑える働きがあるようです。従来の抗認知症薬は、こうした認知症の原因に作用する薬ではなく、認知機能を活性化する物質を増やすことで認知症進行を遅らせるといった作用のために、根本的改善を見込める薬とは言えませんでした。効果は一定程度あり認知症の進行を抑えるのですが、どちらかというと対症療法的な作用で、認知症の原因に迫る薬剤ではありませんでした。このレカネマブは、認知症の根本原因に作用するという意味においては画期的な薬で、その効果が期待されます。現在日本でも承認申請がなされており、半年1年後には、日本でも使用可能となるかもしれません。しかし一方、2週間に一回の注射が必要なことや、認知症のタイプを確定するためにPETや腰椎穿刺といった検査が必要であること、年間350万円以上の費用が掛かるような高価な薬剤であること、また脳浮腫といった副作用に気を付けなくてはいけないために、頻繁にMRIなどの検査を要することなどの欠点もあり、良いことづくめとはいきません。効果についても、100%認知症にならないといったものではなく、その効果は27%の進行抑制がみられるといった限定的なもので、認知症になる手前の方や軽度の認知症の方のみが使用対象となります。

このため、このお薬が、どれほど一般的となるのかそうではないのか、あるいは認知症治療において画期的な進歩となるのかどうかといった点については未知数です。しかし、今後もこうした認知症治療についての研究開発は継続されていくと思いますし、認知症治療の進歩は続いていくものと思います。当院でも高齢化社会の進行に伴い、認知症の治療を求めて受診される患者さんは増加しています。今後も、こうした医学の進歩をいち早く先取りして当院の治療にも取り入れていきたいと考えています。

先月末から外来受付やスタジオ753に新しいスタッフが入職しました。受付の方は、他の精神科クリニックで受付事務を長年やってこられたベテランの方です。これで受付も 7人体制となり、今まで以上のサービスを提供できるのではないかと考えております。また、スタジオ753に入職された方も他業種での経験が豊富な方で、医療福祉とは違った観点での活躍を期待しています。今後ともよろしくお願いいたします。