11月になりました

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。
今年もあっという間に年末です。とくに今年はコロナの関係もあり、長かったような短かったような不思議な感覚です。振り返ってみると、昨年の今頃は本当に平和だったとつくづく思います。当時はいろいろあって大変と思っていましたが、現在の状況に比べると大概のことが大したことないようにも思えます。

話は変わりますが、精神疾患の予後、つまり病気が治りにくいか治りやすいかに大きくかかわってくる重要な要素の一つが、病気の受容と理解だと思っています。自分が精神障害であることを受け入れること、病気の受容することは簡単なようにみえて意外と難しいことです。自分に限って精神障害になんかなるはずがないと思っている方は少なくないと思います。うつ病は比較的病気を自覚している人が多い病気ではありますが、それでも自分は鬱ではないし、ましてや薬物なんか不必要と思っている方は意外と多いと思います。

しかし、実際にはうつ病になっているのに、自分は鬱ではないとかたくなに治療を拒んでしまうと症状は悪化し、重症化します。そのためにかなり重症になってからではないと精神科にかかろうとしない、そうした方は薬にも抵抗感があり、薬物療法が必要な状態となっていても我慢してしまうことが多いのです。休息を勧めても、休職するほど自分は悪くはない、休んでしまうと自分の経歴に傷がつくといって仕事を休みたがらない。このため、治療のスタートラインに立てないために、病状が長期化する、そんな方が結構いらっしゃいます。

その一方、「自分はうつ病(あるいは躁うつ病)だから、無理はできない。ある程度、仕事はほどほどにして、症状が悪化しないように心がけている。」このように自分が病気であることを受け入れて、その自分ができる範囲で活動をしていこうと心掛けている方は、多少仕事などで制限はあるものの、再発や症状の長期化が非常に少なくなります。適度に休息をとりながら仕事を継続する、場合によっては無理に出世競争の中に入っていかない、こうした心構えは最終的にうつ病の予後をよくすると思います。

認知症の方も同様です。自分の物忘れを受容して、「少し物忘れがあるから、デイサービスなどにいって少しでも人とのかかわりを持とう。」と考えられる方は、比較的進行が遅いと思います。逆に、「あんな年寄りばかりいるところに行っても、おもしろくない。自分はボケてはいない」などといって、自宅にこもるようなタイプの方は、進行も速く、物忘れだけではなく、怒りっぽくなったり気持ちが落ち込むなどのBPSDとよばれる精神神経症状を呈する方が多いと思います。

自閉スペクトラム症の方にはそれが顕著に現れます。「コミュニケーションがうまくいかないのは周囲の対応が間違っているからだ、自分は悪くはない。」こうした思考に陥っている方は、非常に予後が悪い。周囲との軋轢も生じやすく、人生そのものの生きづらさを感じる方が多いと思います。一方的に自分が正しいと主張し、周囲を攻撃する。自分が変わらなければいけないのに、周囲を変えようと努力してしまう。こうした状況に陥ってしまった自閉スペクトラム症の方の治療は困難を極めます。

わたくし自身も自分の状況を受け入れること、そのうえで状況を変えていくように努力すること、こうした姿勢を忘れないようにしていきたいと思っています。今月から新しいカルテを導入し、運用を開始します。私を含めスタッフ全員が新システムに不慣れなためご迷惑をおかけするかもしれません。ご協力よろしくお願い申し上げます。