ウイルスあれこれ

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新型コロナウイルスの蔓延によって、ここ一年でわたしたちの生活、考え方は大きく変わったように思います。ウイルスについては以前大きく話題となった本で、サントリー学芸賞と新書大賞をとった福岡伸一氏の『生物と無生物のあいだ』があります。私(梅津)も流行に乗り、読ませていただきましたが、とても感銘を受けたのは、ウイルスが生命と呼ぶには異質な性質を持ちつつも(細胞をもたないため無生物に分類される)、生命と深い関わりがあることでした。

ウイルスを見ることができるようになったのは、1930年代の電子顕微鏡が世に出て初めて可能になったわけですが、生き物でもっとも小さい細菌よりもさらに小さいこと、エッシャーの描く造形のように優れて幾何学的な美しさを持っていたことも、研究者にとっては衝撃的だったそうです。ちなみに細菌の細胞壁を破壊する抗生物質は、細菌やカビには有効でも、細胞をもたないウイルスにはまったく効きません。そういった理由で新型コロナウイルスにもワクチンのみが有効、とされているのです。

遺伝子情報を元にタンパク質を合成できる生物に対して、タンパク質を合成できないウイルスは生物に非ず、というのが一般的でその点をもって、生物と無生物の間に壁がありました。しかし近年、巨大ウイルスの「ミミウイルス」の発見を機に、「ツパンウイルス」によって、この壁は壊れ始めました。難しい話は割愛しますが、とにかくタンパク質を合成するための遺伝子をこれらのウイルスが保有していることがわかってきたのです。

そして、荒川の河川敷の標本から、東京理科大学教授の武村政春氏が『メドゥーサウイルス』という巨大ウイルスを発見し、世界的にも話題になりました。あべクリニックのすぐそばで起きたこの発見もあって、現在では、ウイルスと生物が遺伝子情報を交換している可能性があること、また、遺伝子は親から子への「垂直移動」だけでなく、生物種を超えた「水平移動」が行われているのではないかと考えられるようになりました。

生物の進化は、ウイルスがもたらしたものかもしれない、と考えてみると、今回のパンデミックも壮大な流れのなかの一つなのかもしれませんが、そこまで考えて手洗いうがい、マスクをするのもおかしな話ですので、これくらいでやめておきます。

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11月の答え→「モアイ」