こんにちは、精神保健福祉士の 坂井路子です。まだ暑さはおさまりそうにありませんが、わたしの気持ちは文学の秋に向かいつつあります。今年は読書の秋、執筆の秋にしたいと考えています。
日本語はおもしろいもので、漢字、ひらがな、カタカナ、最近では英語までも織り交ぜて表記されるのが特徴的です。そして、同じことばでも表記する方法によって、読み取る際の印象が大きく変わってくるのも特徴ですね。どういうことか、夏の風物詩ともなっている怪談話から例を挙げてみます。
「化物」、「ばけもの」、「バケモノ」
――どうでしょう、おなじba-ke-mo-noという単語ですが、印象は全く異なってきませんか? 「化物」は少しかびくさい、薄明かりのなかに現れるもののイメージ。「ばけもの」はおそろしいけれど少し愛嬌のある感じがします。「バケモノ」は異形のもの、ぐちゃぐちゃとしてほかに表現しづらいもののような印象です(これはどれもわたしの感じ方なので、みなさんそれぞれの感じ方と一致するとは限りませんが……)。
こうした表記による印象のちがいは、わたしが読んだり書いたりすることがすきな理由のひとつでもあります。読み手のときは、表記のちがいも含めて文章全体の雰囲気をたのしみ、イメージをいっぱいにふくらませて読みふけります。書き手のときは、わたしの感じる印象にいちばん近いものを選んだり、こう表記したらどんなイメージを持たれるだろう?と想像しながら、あえて特殊な表記をしたりします。 ただ受け身になって物語に流されるのもいいですが、「ことば」に注目して想像力全開で読書してみるのも、なかなかにたのしいものです。もう少し夜風が涼しくなったら、ぜひ試してみてください。