治療とケア

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精神科クリニックが、なぜデイケアのような交流の場を併設しているのか。ときどきそんな質問をいただきます。

あべクリニックは、精神科外来診療に加えてデイケアを併設しています。一見すると、「医療」や「治療」とは少し離れたところにある活動に見えるかもしれません。
診察は、ある種の「形式」を必要とする場所です。問診があり、診断があり、処方がある。受付、予約—こうした枠組みがあるからこそ、その内側で、人は安心して自分の苦しさを言葉にできる。形式があるから、混乱のただなかにあっても、何度でも同じ場所へ戻ってくることができる。

ただ、人が回復していく道筋は、言葉と処方箋だけでできているわけではありません。

皆と同じ映画を見るひととき、色鉛筆を選ぶときのささやかな迷い、誰かと並んで、ただ黙って手を動かしている時間。指先のリズム、布の手ざわり、湯気の立つお茶。そうした「言葉にならない回路」を通って、こころがゆっくりと自分のところへ戻ってくる—デイケアの現場ではそんなことが起きているのかもしれません。

「患者」として椅子に座るのではなく、ひとりの人として、何かを作り、誰かと過ごし、ただそこにいることが許される時間。診察室で交わされる言葉とは少し違う言語が、そこには流れています。

形式がある治療によって救われることもあれば、形式のない自由が「ケア」として大きな意味を持つこともあります。診察室と デイケアのあいだを行き来できることで、「治療」はよりいっそう効果を発揮することもあるのではないでしょうか。