もうすぐ春ですね

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こんにちは。
院長の阿部哲夫です。

まだまだ寒い日が続きますが時折暖かい日もあり、春の足音が近づいてきているのを感じます。しかし、春の訪れは同時に去年の震災の記憶をよみがえらせもして、春の訪れを単純には喜べないような複雑な心境にもなります。春が来て、少しは暖かくなったのに、毎日の地震と原子力発電所の事故の報道で、気持ちが少しも明るくならなかった昨年のことが思い出されます。去年の花見のころは、自粛自粛で花を愛でた記憶さえありません。あの震災から1年がたちますが、復興はまだまだの様子です。しかし、今年は少しサクラを楽しもうという気持ちになっています。皆さんはいかがでしょうか?

最近は、うつ病に対する世間の関心が非常に高まっています。毎日のようにうつ病に関するテレビ報道もあり、また厚生労働省の自殺予防のキャンペーンも始まったようです。うつ病による自殺者数も3万人となり、色々な努力にもかかわらず大きく改善する兆候は無いようです。そんなさなか、NHKが大々的にうつ病を取り上げた特集を放送していました。内容は、うつ病の新しい治療法と検査法などについてでした。テレビ放送にありがちな視聴者受けを狙った放送内容が少し我々専門家からみると、疑問を持つところもありましたが、うつ病に関する一般の人々の関心を高めたという点においては評価できるものでした。

そこでも大きく取り上げられていた問題が、隠れ躁うつ病の問題です。これは、多くの患者さんが精神科や心療内科をうつ状態のときに受診することが多いために、うつ病と診断されることが多いためであるといわれています。そのために、これまでに躁状態があったにもかかわらず、この躁状態が注目されずに、実際は躁うつ病なのにうつ病と診断されてしまうケースです。この鑑別は、熟練した精神科医でも間違うことが無いとはいえず、今の精神科診療では大きな問題となっています。特に、Ⅱ型の躁うつ病といわれている、うつ状態が主体で躁状態が軽い躁うつ病があり、このⅡ型の躁うつ病がうつ病と間違われてしまうことが多いといわれています。

躁うつ病とうつ病を鑑別しないといけないのは、何よりもその治療法が異なるからです。躁うつ病では、一般的には感情調整薬といわれているリーマスやデパケン、あるいはラミクタールといった薬物にて治療することが推奨されています。これに比べて、うつ病ではやはり抗うつ剤(パキシル、サインバルタ、レクサプロ、ジェイゾロフトなど)による治療が主になります。このために、躁うつ病のうつ状態の患者さんに抗うつ剤を使用するとなかなかよくならないということが起こるのです。

しかし、この軽い躁状態は実は本人が気づきにくいという特徴もあります。つまり躁状態であっても軽いので、なんとなく調子がいい状態とか仕事がはかどる時期としか思われず、自分の本来の状態と思われることも少なくないからです。もし、ご自分がこうした状態があったと思い当たる方は、診察のときに是非ご相談ください。

3月から4月は異動の時期でもあり生活環境も変化する時期です。どうか皆さんも、こうした変化の波にのまれずに、ご自愛ください。