こんにちは。院長の阿部哲夫です。
東日本大震災で被災された方々に、こころよりお見舞い申し上げます。
桜も散り、本格的な春ですね。今年は、震災の影響もあり谷中の花見も例年に比べると静かでした。去年までは、ちょっと騒ぎすぎと正直眉をしかめていたのですが、あの平和な光景が懐かしい気さえします。しかし外を見渡すと、花は咲き気候はあたたかくなり、景色は例年と変わらずに本当に平和です。こうした光景を見ると何かほっとします。
震災後1カ月以上が経過しました。しかし、原発事故や被災地の状況の報道を見ていると、震災は現在進行形で続いていると実感します。最近は、ACのコマーシャルを聴いていると、なにか違和感を感じるようにもなってきています。「がんばろう日本」と言われても、言われなくてもみんながんばっているし、私はなにか強制されている感じさえ持ってしまいます。なにか、うつ病の人に「がんばれ」と励ますこととの共通点を見てしまいます。がんばっても力が出ない、気力が出ないのが、被災した人の心境ではないでしょうか?むしろだまって寄り添い互いに協力し合うことが、今必要な気がします。愚痴を聞いてあげる、そっと見守る、できることは手を差し伸べる。これはうつ病の人に対する家族の対応の基本なのですが、今求められているのはこうした態度ではないでしょうか?
被災した人たちは、これまで築いてきた財産をなくし、家を失い、そればかりか最愛の家族を失った人たちも大勢いると聞きます。こうした状況で正常な精神状態を保つことのほうが、不思議だと思います。PTSDやうつ病になる方が続出して当然ですし、自殺の危険性のある方も大勢いらっしゃると思います。これを考えると、現地の精神科医の苦労は、想像に難くありません。先月も話しましたが、私も事情が許せば、ぜひ現地に行きたいと思っているのですが、諸般の事情もあり行動できていません。しかし、当院の非常勤の北村先生が、東京都精神科診療所協会を通じて、被災地のボランティアに行ってくださることになりました。北村先生は、医局は我々と同じ東京医科歯科大学出身ですが、卒業が仙台にある東北大学医学部で、多くの知人や同級生が被災地で診療に苦労をしているのを見て手伝いたいと志願されたようです。本当に頭が下がる思いです。戻ってきた際には、現地の様子を聞かせてもらおうと思っています。
当院でも、地震の影響で具合の悪くなった方や、実際被災地や福島から避難してきた方、たまたまその当日東北地方にいた方など、精神的なバランスを崩されて受診される方が、何名かいらっしゃいました。遠く離れた東京でもこの状態です。現地の様子は我々の想像を超えていると思います。しかし、日本全体がうつ病になっているような現状は、早く正常化する必要があるのではないでしょうか?そのためには、私は個人個人が早く平常心を取り戻し、仕事だけではなく娯楽的なことも含めて目の前の日常的活動を以前のように、あるいは以前よりましてしっかりと行っていくことが大事なのではと思っています。私は浮足立たないで、日常の診療をこれまで以上に堅実に行っていきたいと思っています。
みなさんは、この地震後の1カ月何を感じ、何を思ったでしょうか?