花見の季節です

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。

4月に入り桜も満開です。毎年この時期に谷中墓地を朝昼に散歩するのを楽しみにしています。しかし、今年の谷中墓地は例年と違っていました。去年までは、いたるところでビニールシートを敷き詰めて昼間から宴会をするのが見慣れた光景でした。かく言う私も友人との花見の宴を谷中墓地で行っていたこともあります。

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しかし、今年は宴会や飲食が禁止の立て看板が出され一切の宴会が禁止になっていました。この通達を破るグループが全くいなかったことにも驚きましたが、意外と静かな墓地の風景はさらに桜の美しさを引き立てているようで、この管理事務所の英断は成功だと思いました。また、ルールをきちんと守る日本人の美徳を見た気がしました。

お彼岸が過ぎて少し温かくなり外気がすがすがしくなるこの時期に桜が咲くのは、本当に絶妙の時期ともいえます。またこの時期は、入社や入学、異動など新しい門出の時期でもあり、さらに華やぐ時期でもあります。しかしその一方でなぜか、この時期になると精神的不調を訴える方が増える時期でもあるのです。毎年このことはお伝えしているのですが、処方薬や環境は変わらないのに状態が悪化する方が増えるのです。逆に言えばこの季節を過ぎれば状態が改善するのですが、悪化の程度によっては仕事にも支障をきたす方も少なくなく、いずれ良くなるからとばかりは言えないのが現実です。この時期は本当に生活のリズムを崩さずに日常の休息を十分にとることを心掛けるようにお勧めします。

最近の私の関心は何と言っても理研のSTAP細胞問題です。今振り返ってみると、世紀の大発見のわりに研究歴の少ない研究者だなとは思いましたが、まさか天下の理研の研究者がこうしたずさんな研究論文を発表しているとは夢にも思いませんでした。その反面あまりにも素晴らしい研究結果に疑問を持ったことも事実です。数年前にも同様に論文をねつ造した研究者が話題になったこともあり、その事件の二の舞にならなければいいなとも思っていました。

しかし、もし完全にデータをねつ造したのだとするとなぜそんな嘘をついたのかが疑問です。ちょっと研究をした人間であれば、データをねつ造したことがばれれば研究者としての生命がたたれることくらいは理解しているはずですし、データがねつ造かどうかは追試すればいずれは分かってしまうことです。それほど、第一線で研究することは競争が激しいのか、あるいはそうまでしてでも目立ちたかったのか。いずれ徐々にその状況は明らかになっていくと思いますが、精神科医としてはなぜ小保方さんがそのような行為に及んだのかに関しては興味が尽きません。

開業してからは論文を書くなどの研究からは遠ざかっていましたが、我々臨床医は嘘をつきたくても嘘のつきようのない仕事であるとつくづく思います。なぜなら治療の中では、病気が改善するかしないかは患者さんが一番わかっていることだからです。きれいごとかもしれませんが、出世のためにデータをねつ造したりする必要がないというだけでも恵まれているのかもしれません。すべてにわたってクリーンに生きていくのは難しいことかもしれませんが、谷中墓地で飲食をしないのと同様、偽りなくルールを守って行動することが一番なのだと改めて思い知らされた事件でした。