鬼はそと

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こんにちは、院長の阿部哲夫です。
早くも正月は終ってしまい、2月に入りました。こころなしか、春の足音が聞こえる感じもあり、日も少しですが長くなっているなあと感じます。春は、花粉症やうつ病の方が増える季節で皆さんにとっては過ごしにくい季節だと思いますが、暖かくなり春めいてくる気候は、なにかうきうきする感じがあり、心待ちにしています。

2月のイベントはやはり節分でしょうか。2月は風邪やインフルエンザの流行の季節ですし、花粉症の始まりの季節でもあります。こうした意味でも、昔から2月は病気や災難の季節だったのかもしれませんね。豆をまくだけで、鬼だけではなくインフルエンザや花粉症が退散してくれるといいのですが、そうもいかないようです。今年はインフルエンザのワクチンをうっていても、インフルエンザにかかる人が若干いるようで、何かの前兆でなければと危惧しています。

最近、といっても数年前からですが、新型うつ病がはやっているという報道が目に付くようになりました。これは、何も目新しい言葉ではなく、昔は5月病とかスチューデントアパシーとかいわれていたものと同じ病態です。特徴としては、従来のうつが中高年に発症するのに比べて、20代30代の若い人に発症する。従来型が自分はだめな人間と自分を責める傾向あるのに対して、新型ではこうなったのは環境や周りの人のせいと他罰的となっていること。あとは、仕事は出来ないが遊びにはいけるという中途半端なうつ状態であること。薬物への反応が悪く、長期化遷延化すること。従来型ではうつ病といわれることに抵抗を示す人が多いのに対して、新型ではむしろうつ病といわれることを抵抗無く受け入れるといった傾向があるようです。

こうした状態を見て、病気ではなく単なる怠け病ではないのかといった疑問批判があることは事実です。実際、専門家の中でも新型うつ病といった病態はあるのかといった議論は盛んになされています。かくいう私も、病気として捉えるべきなのかどうかといった迷いが生じることもあります。しかし、よくよく話を聞いてみると、新型うつと思われる患者さんも、回復したい、仕事に戻りたいという気持ちはあるのです。けっして今のうつの状態に安住しているわけではないですし、治療の為に通院も熱心に継続されています。しかも薬への反応が悪い、治療効果が出にくいといっても回復されている方はたくさんいます。

したがって、私はやはり新型うつ病・非定型うつ病もうつ病のひとつのタイプなのだと考えています。ただ、要因のひとつとして、現代社会のストレスの増大によって従来ならうつ病とならなかった方がうつ病になるようになったことがあると思います。もうひとつの要因は、日本人自体の気質の変化だと思っています。かつて貧しかった日本で、モーレツ型の会社人間が燃え尽きてうつになったのが従来型うつ病だとすると、豊かになって価値観が多様化する中で、目標ややりたい仕事を見つけられずに社会に放り出されてしまった若者が、やりたくもない仕事を明確な目標もなくやらされることで落ち込んでいくのが新型うつ病なのではないでしょうか?

最近、国会の答弁などを見ていると、首相も心なしか元気が無いように見えるのです。野党から攻められ、党内からも批判され、国民からは見放され、こんな針のむしろのうえでよくうつ病にならないと感心している精神科医は、私だけではないように思えます。首相がかかるとしたら、やはり従来型のうつ病なのでしょうか。