ワンダーランド駅で

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こんにちは。院長の阿部哲夫です。
梅雨ですね。毎日雨で湿気も多く憂鬱になります。洗濯物も乾きませんし、外でのスポーツもできません。わたくしは天然パーマなので、湿気があると髪の毛のまとまりも悪くなりそれも悩みのタネです。この季節、皆さまはどう乗り越えているのでしょうか?

先月お話をしたかもしれませんが、この季節の雨の日には雨を眺めながらブラジル音楽など自分が好きな音楽を聴くことにしています。雨の日には周りからは雨音しか聞こえません。車の音や人の話し声、工事現場の音など、雨に吸収されるのかほとんど聞こえてきません。聞こえるのは雨音だけです。この雨の中で自分が好きな音楽を聴く。わたくしにとっては、貴重な時間です。

こうした情景は、映画の中のワンシーンでもあります。20年前に公開された映画で「ワンダーランド駅で」という映画をご存知でしょうか?アメリカで作られた、他愛のないラブコメといっていい映画です。ストーリー自体はとるに足らないといっても過言ではありません。仕事に没頭するあまり少し婚期が遅れた美人看護師が婚活をするのですが、うまくいきません。しかし、たまたますれ違った男性と運命の出会いをしてすれ違いを繰り返しながらも結ばれるといったありがちなストーリーの映画です。しかし、この映画はブラジル音楽好きにとっては有名な映画です。なにせ映画の中の音楽がすべてブラジル音楽、ボサノバなのです。

その映画のワンシーンに雨の中でボサノバを聴くシーンがあります。同棲していた恋人とひどい別れ方をした後、雨の中一人置かれた部屋の中で美人看護師がレコードで聴く「コルコバード」が最高にいいのです。「静かな夜、静かな星。。。」というフレーズから始まるアントニオカルロスジョビンが作曲した有名な曲ですが、アストラッドジルベルトが歌うその曲が本当に雨の日のそのシーンにぴったりなのです。

このワンシーンに影響されてというわけではないのですが、最近レコードプレイヤーを新調しました。これまでわたくしが使っていたレコードプレイヤーは、40年前にわたくしが学生の時に使っていたものでさすがにボロボロになっていました。それでも使えていたのは、その当時の日本製の工業製品の耐久性のおかげです。そうしてレコードを再び聞くようになると、これが実に音がいいのです。多少レコードの傷による雑音が入ることもありますが、音色のやさしさには驚きます。レコードプレイヤーにレコード盤をセットして、針を落とす瞬間の「ぷつっ」という音にも懐かしさを感じます。

レコードを聴くようになり、音楽をより深く聞くようになった気がします。メインのボーカルだけではなく、ギターのふくよかな音色やドラムスのリズム、軽やかなピアノ、一つ一つの音がつぶだって聞こえてくるのです。もちろんCDやネットからの音楽は雑音もなくきれいなのですが、何かが足りない気がするのです。今はネットからあらゆる音楽が手に入る時代です。しかし、レコードといったアナログ音源をきくと、なにかマインドフルネスにも通じるような至福の時間を経験できると思います。ネットだウェブだAI(人工知能)だと世の中はドンドン便利になっています。得るものが多い一方で、その分失うものも少なくないと思います。

デジタル化された音ばかり聞いていると、その分音楽の本当の奥深さを知る機会を失っているのではないでしょうか?レコードを買おうと思えばアマゾンで注文すれば手に入るのだと思います。でも私はあえて、レコード店に足を運び店員さんとの会話を楽しみながらレコードを買いたいと思っています。