こんにちは。院長の阿部哲夫です。
連休後もさわやかな日が続き、毎朝起きるたびに気分が良いですね。でも、もうすぐ梅雨入りです。皆さんが、この記事を読んでいるときはもう梅雨入りしていると思います。毎年書いていますが、梅雨は苦手な季節です。
あまり梅雨が好きという人はいないかもしれませんが、なんとか工夫してこの季節を乗り越えなければと思っています。とはいえ、雨音を聞きながら、静かな音楽をかけ小説を読むといった対策しか思いつきません。最近某デパート内にレコード専門店がオープンしたと聞いたので、そこで雨の日用のレコードでも買いに行こうと思っています。
最近の話題のキーワードは何と言っても中高年の引きこもりでしょう。色々とテレビでこの話題を取り上げられていますが、現場の精神科医療を知らないのか煽るような報道ばかりで具体的な対策が示されていません。また、あたかも引きこもっている人は危険といった誤解をまねきかねないような発言をするコメンテーターもいてあきれてしまいます。
推計60万人以上いるといわれている中高年のひきこもりですが、先日のような事件を起こすのは数年に一件あるかないかです。多くの方は、社会生活に疲弊し、挫折を味わう中で社会に対して心を閉ざし自信を喪失しているのだと思います。しかし、中には自分の不遇は社会が間違っているせいであり自分は悪くはないと、他罰的になっている方もいることは事実です。こうした方が、自分を過小評価した間違った社会に復讐するといった、誤った考えをいだいてしまうことがあり、こうした誤った考えから衝動的に行動を起こしたのが先日の川崎の大量殺傷事件だと思います。
では、こうした事件はどのように防いでいったらいいのでしょうか?小学校の登下校の警備員を増やすのも一つの方法ではありますが、限界があります。わたくしは、やはり引きこもっている人に直接働きかけ、社会との接点を増やしていくことが必要だと思っています。川崎の事件も親族が市役所に相談に行っていたと聞きますが、もうすこし突っ込んだ対応が必要だったのだと思います。まずは、本人は引きこもっているのですから、自宅への訪問をしなくてはいけません。行政の保健師さん、場合によっては区の顧問の精神科医の訪問です。わたくしも、区の精神保健相談を長年担当していますが、年に数件はこうした相談があります。引きこもりのすべてに精神障害があるわけではありませんが、中には統合失調症や自閉スペクトラム症、うつ病といった精神障害を抱えている方もいます。こうした精神障害を抱えている方へは訪問診療や訪問看護などの訪問医療を導入することで、社会からの孤立を防ぎ、場合によっては社会復帰につなげることができると思います。現に、当院ではこうした訪問医療から、外来医療につながりデイケアや作業所などの通所につながった方も少なくありません。
問題解決には、こうした相談が行政にあった時に、「こちらに連れてくれば対応します」といった消極的な対応ではなく、こちらから出向いて積極的に介入するといった姿勢が必要なのだと思います。引きこもりの方の多くは社会が怖いわけですから、そもそも外に出て知らない人に会うなんでことはできないのです。つまり、こうした訪問医療、アウトリーチ活動に対して、国が積極的に予算を投じ、こうした医療を行っていく機関をサポートすることが大切だと思います。訪問看護や訪問診療を通じて、「他人と接することは怖くはない」、「いろいろと相談するといいこともある」ということを伝えていければと考えています。いまは、すこしボランティア的活動になりますが、当院もこうした引きこもりの方へのアウトリーチ活動を区とも協力し推し進めていければと思っています。現場のこうした地道な努力が、こうした不幸な事件を少しでも減らすことの一助となればと考えています。