こんにちは。院長の阿部哲夫です。
いよいよ本格的な秋です。過ごし易い日も増え、中秋の名月、紅葉、芸術の秋そして何よりも味覚の秋です。一年中で一番過ごし易い季節ですが、あっというまに冬が来そうです。できるだけ、天気のいい日は外出して、秋の空気を堪能したいものです。毎日のように訪れている上野公園の紅葉も捨てたものではありません。
先日、講演会を聴きに京都まで行ってきました。数年前にも京都を訪れたのですが、今回はあまりに外国人客が多くて驚きました。どこへ行っても、外国語しかきかれません。たまに日本語で話している人がいると新鮮なくらいです。しかし、立ち入り禁止のところに入ったのか、きれいにしつらえてある庭園の一部に足跡があるのを見ると残念な気持ちになります。ただ観光に来て景色を見るだけではなく、日本人の精神性や美意識を学んで帰ってほしいと上から目線になってしまいます。京都はどの名所に行ってもその規模、格式、歴史には驚くばかりで、浅草寺がなにやら目新しいもののように感じてさえしまいます。若い時には、目新しいものや奇抜なものに目を奪われがちでしたが、最近はこうした古くから変わらない物に魅かれてしまいます。それにしても、あの物資も乏しい時代にこれだけ豊かな精神世界や高い美意識を持っていたかと思うと、物質の豊かさやコンピューターの便利さで失っていくものも少なくないのではと心配になります。
金閣寺や銀閣寺、清水寺といった京都の代表的な観光名所も廻りましたが、何よりよかったのが、南禅寺と仁和寺でした。いずれも天皇家ゆかりの歴史のある寺院ですが、その落ち着きとしずけさ、視覚的な美しさにとても癒されました。静かに庭を見ているだけでもあっというまに時間が過ぎ、何とも言えないリラックスした気持ちを持つことができました。そこには、物質や快楽では得られない満足と気持ちの安定があり、すでにこの時代の人々はこうした価値の有用性に気が付いていたと思うと驚くばかりです。南禅寺で禅の修行をし、精進料理を食べ、穏やかな気持ちで過ごすことができれば、かなりの精神障害や内科疾患は改善するのではと思いました。これを機会に、少し仏教の知識を深めてみたいとさえ思いました。多くの人が京都を訪れるのは、単なる観光名所の多さより、こうした歴史や古い日本の精神世界に触れられることにあったのだと、おくればせながらこの年になりようやく気が付きました。
最近は、マインドフルネスといった、瞑想による精神状態の改善法も注目を浴びています。これも、禅と西洋医学の融合といってもよい治療法です。目新しい治療法だけではなく、従来からの歴史のある精神修養法も捨てたものではないということだと思います。今月から当院でもマインドフルネスのグループ療法が始まります。もし興味のある方はお尋ねください。また、10月からは村内先生の外来が木曜日午後から開始となります。村内先生は精神科病院の院長職まで勤められた経験豊富な先生です。受診希望の方がいらっしゃいましたら是非受付までお問い合わせください。