スポーツと心の問題にはさまざまなものがありますが、これを取り扱う専門医はあまり居ません。私たちは、日本スポーツ精神医学会という学会で、この問題についていろいろな方面から研究を行っています。スポーツと心の問題のかかわりには大きく分けて二つあります。一つは、スポーツ選手の心の問題の解決、もう一つは、うつ病など心の問題を解決するために運動の習慣を利用するというものです。
スポーツ選手は、意外にこのような心の問題を持っていますが、相談すべき専門医がおらず受診先に困っている場合もあります。このような悩みには、オーバートレーニング症候群、うつ状態、摂食障害、不眠、などがあります。問題をそのままにせず、アスリートをとりまく状況を理解しながら治療を行う専門医を受診することで、はやく競技に復帰することが期待されます。
スポーツは、心の問題の治療にも良いという結果も出始めています。スポーツで体を動かすと、気分がスッキリするということは、多くの方々が経験していると思いますが、最近はうつ病の治療にも、運動療法が良いとされています。さらに、うつ状態になると体をあまり動かさなくなってしまうので、体力が低下したり、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病にかかりやすくなるという報告もあります。このような問題は、症状が改善したあとの職場復帰への妨げになることもあります。薬物による治療効果がある程度出てきたところで習慣的な運動を行うことで、職場復帰がスムーズになり、また身体的にも健康になることで自信がつき、更には良い心の状態を保っていくことが期待されます。心の問題にも、スポーツは良い働きを持っていると考えられます。