あべクリニックブログ、更新しました。

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In あべ院長のエッセイ Posted

こんにちは、院長の阿部哲夫です。
ようやく桜が咲きました。地球温暖化の影響で毎年開花の時期が早まっていただけに驚きです。3月末になりようやく開花。今年は入学式に桜の写真が取れるかもしれません。今年の新一年生はラッキーですね。やはり天気はなかなか予想できないです。果たして来年の開花はどうなるのでしょうか?

桜の季節になると新人の頃を思い出します。1984年3月に大学を卒業し、4月から医科歯科大学の精神科研修医になったのが昨日のようです。今年は2024年なので、気がついたら医者になって40年が経ってしまいました。芸能人ならデビュー40周年記念リサイタルをやらないといけないでしょう。その当時は、今こうして開業して自らクリニックを運営しているという現在の姿は想像もできませんでした。私が、卒業したころは精神科のクリニックはほとんどなく、精神科と言えば精神科病院か総合病院の精神科外来があるのみといった状態でした。このため、精神科に進んだら勤務医になると考えており、開業するということは夢にも考えていませんでした。

当時、父親に医者になったのになんで精神科に進むのかと、いぶかしがられたことを思い出します。精神科を志望して大学に入学したこともあり、卒業する時も精神科を専攻するという意思は変わりませんでした。当時の私は、光が当たらなくとも精神の障害を持った人たちの支援を少しでもできればと思い、精神科医を志したのです。その思いは今でも変わりません。しかし予想に反して今や精神科はいろいろな分野から脚光を浴びる科になってしまいました。たとえば認知症です。高齢化が急速に進行しいまや認知症対策は厚労省の課題の大きな柱となっています。

当院も認知症疾患医療センターとして東京都から指定を受け、その活動の重要性は年々増しています。産業保健衛生の分野ではうつ病をはじめとするメンタルヘルスに対する対策は、経済界にとって大きな課題となっています。それだけではありません。大谷翔平選手の専属通訳だった水原一平氏のギャンブル依存の問題も我々が取り扱う分野です。

水原さんの問題に関して言えば、彼が嘘をついていたことが大きな問題だと報道されています。しかし我々のように依存症に少しでも関わっているものから言わせれば、依存症になっている方と虚言は表裏一体です。逆に、自分がやりたいことのために嘘をついてまで達成しようとするということは依存症であるかどうかの重要な判断材料です。例えば、アルコール依存でも、家族にはそれほど飲んでいないと必ず実際の飲酒量よりも少なく申告します。覚せい剤などの薬物依存の患者さんたちは、当然違法薬物をやっていないと嘘をつきます。買い物依存の人にしても借金を重ねてまでも買い物をしているとは決して家族にも伝えません。水原氏がギャンブル依存であるならば、ギャンブルをするためには嘘をついてまでやることは当たり前で驚くには値しません。

現在、カジノを日本に誘致して観光資源として税収を増やそうという政策がすすめられていますが、カジノを日本で開設することによる依存症対策の重要性についての議論は不足していると思います。果たしてカジノに慣れていない日本でカジノというギャンブル施設を作ることが真の国益にかなうのかは議論の余地があると思います。いまは、単なる有名人の金銭的なスキャンダルとしてこの問題が扱われていますが、医師歴 40年を迎えた精神科医としてはこの事件をきっかけにギャンブル依存症についてもっと深い議論のきっかけになればいいと思っています。