梅雨が明けました

Pocket

こんにちは。院長の阿部哲夫です。まだまだ梅雨が続くと思っていたら、いつの間にか梅雨が明けていました。それもそのはずで、今年は例年よりも15日も早いとのこと、梅雨嫌いの私としては嬉しい想定外のニュースでした。しかし、その一方で水不足も懸念され喜んでばかりはいられないようです。

7月の初めの風物詩は、ほうずき市や朝顔市です。こうしたイベントは毎年夏の訪れを感じさせてくれますが、わたくしは朝顔市というと開業の頃を思い出します。

ほおずき

 

当院が開業したのは、平成9年の7月10日でした。その頃は、まだ荒川区日暮里という土地にあまりなじみもなく、希望もある反面不安で一杯でした。その当時は、今のようにメンタルクリニックもあまりなく、こうした精神科診療所といったものの運営が成り立つのかどうかもよくわかっていない時代でした。精神科でしかも診療所で開業している医師も少なく、私が所属していた教室でも開業している先生はごくわずかでした。

その当時はこれほど多くの患者さんに受診していただける診療所になるとは夢にも思っていませんでした。ですから、開業時の診療所は本当に小さなものでした(現在のカウンセリングルームのあるところが開業時の診療所です)。待合室も10人待っていれば一杯になる規模でしたし、処置室も一人点滴すれば他にスペースはありませんでした。しかし、今ではカルテ番号は12000番を超えています。

非常勤の先生もいるので、この患者さんをすべて私が診察したわけではありませんが、1万人近くの患者さんを診察させていただいたのだと思います。こうした多くの患者さんに受診していただき、治療すると同時に多くの貴重な経験を積まさせていただきました。こうした経験が、現在の診療に活かされていることはいうまでもありません。さして優秀というわけではない私が、曲がりなりにもここまで診療を継続できているのも、29年間の臨床経験のなかで多くの患者さんと接してきたことが糧となっていると思います。そうした意味でも、本当に感謝してもしきれないという思いです。いつもこの季節になると、こうした開業当時のことが思い出され、初心の頃に思いが及びます。これからも、こうした思いを忘れることなくやっていきたいと思っています。

 

いま、ちまたは参議院選挙の話題で持ちきりです。その争点の中の一つに医療に関することもあり、無関心ではいられません。混合診療の解禁や株式会社の医療への参入が取りざたされているようです。平たくいうと、混合診療の解禁は、医療費の増大を抑えるために、高度医療を民間の保険に任せ、公的保険は標準的治療のみカバーしようということです。つまり、高度医療は金銭的に余裕のある人しか受けられなくなるということなのではないでしょうか?たしかに国の財政には限りがあり、このまま医療が進歩していけば際限なく医療費が増大していくことは明らかです。しかし、金銭的な理由で高度医療が受けられない多くの患者さんが出てきてしまうような制度がいいのか、これは難しい問題だと思います。

また株式会社の参入は、利潤を追求することが目的の株式会社に医療がなじむのかどうか、これも大きな問題です。確かに大きな資本が入ることで効率化したり、設備を大規模化できるというメリットはあると思います。しかし、医療機関がチェーン店化することがいいのかどうか、利潤を追求し医師がノルマを課せられるようなこともあるかもしれないのです。中には志の高い会社もあるかもしれません、社会への貢献を第一に考えるような社長もいるかもしれません。しかし、それは一部の例外なのではないでしょうか?

 

もちろん、医師の中にも利潤ばかりを追求している経営者になってしまっている人もいるかもしれません。しかし、多くの開業医は一応は経営者ですが、あくまでも一臨床医の視点は忘れてはいないと思うのです。そこが営利企業の経営者との大きな差かもしれません。この季節に開業時のことに思いをはせると、経営者としては今一つでも、少々不器用なところがあっても、初心を忘れずに一臨床医としての診療を大事にしていきたいと思いを新たにしました。