スタッフ紹介

Pocket

初めまして。4月に入職いたしました心理士の小野と申します。外来、デイケアにて勤務させていただいています。以後、お知りおきいただけましたら幸いです。

a1400_000307_mのコピー

私は子どもの頃から、何か絵を描いたりものを作ったりすることが好きで、心理士を志すより前に、美術系の学校への進学を目指して予備校に通っていた時期がありました。ただ、当然ながら予備校というのは「純粋に美術を学ぶ場」ではなく「受験に受かる美術を習得する場」なので、作品を作るごとに他生徒のそれと並べられて出来を比較され、講師に良し悪しを講評され、と、常に他者との競争心や、他者からの評価への関心を駆り立てられる場でした。当時の私は、そういう厳しさを乗り越えてまで美術を志そうという覚悟が持てず、半ばで予備校を退学してしまいました。

今では、自分で絵を描くということはあまりありませんが、休日は時々美術館に出掛けます。最近、美術展で見た絵に大きな衝撃を受けました。それは、とあるプライベートアトリエの主催する展示会で、展示作品はみな、ダウン症を持つ方々の制作したものでした。

その多くは油彩や水彩を用いた抽象画で、何色もの絵の具が迷いのないタッチで思いのままに塗り重ねられたものや、幾何学模様風に規則的に色や形の並べられたものなど様々あり、一目見て、その斬新なダイナミックさや緻密さにまず驚かされたのですが、それ以上に心を打たれたのは、どの作品にも共通して、「上手に描いてやろう」「人を感動させてやろう」「○○賞を狙ってやろう」、そういう媚びやてらいや、下心のようなものが一切感じられなかったことでした。ただただ、絵を描くという一瞬一瞬の行為を、無心に楽しんでいる作者一人ひとりの気持ちがこちらにストレートに迫って来る感じがしました。予備校生時代、「受験に受かる美術」をうまく受け入れられなかった自分が、心の底で求めていたのはこういうものだったのかもしれないと、その時に思いました。

人の目や評価を気にすることは、社会で人と関わりながら生きて行くうえでなかなか逃れることの難しいことですし、周囲からも様々な形で要求されるものだと思いますが、そちらに傾き過ぎると苦しくなるなぁと思います。かと言って、自分の率直な思いに向き直って、それをストレートに表現してしまれば楽ですけれど、それがまた難しい場合も多いと思います。

両者の、自分に一番しっくり来るバランスを見つけるのはとても大変なことで、私自身もまだまだ試行錯誤中ですが、今後、例えばそんなことを皆さまと一緒に考えるお手伝いもできるよう、心理士として精進していければと思っています。
今後、どうぞよろしくお願いいたします。