日本の価値観

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大分寒くなってきました。院長の阿部哲夫です。
時がたつのははやいものです。最近は朝夕に寒さを感じるようになりました。いよいよ本格的な秋と言う感じです。秋には色々な表現がありますが、わたくしの場合はもっぱら食欲の秋しか堪能できていません。本来は新しい運動でも初めて、スポーツの秋と行きたいところですが、テニス以外の運動はなかなか始められていません。オリンピックに向けて何か新しいスポーツを始めることが今月の目標です。

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秋は行楽の秋でもあります。先日の連休に、伊勢神宮まで行ってきました。昔からの日本の風習であるお伊勢参りを体験してきました。今年は20年に一度の遷宮の年に当たり、しかも10月上旬に遷宮が執り行われたばかりと言うこともあり、伊勢神宮は大変なにぎわいでした。地元の人も驚くくらいの人出で、正月以上の混雑のとのことでした。しかし、神宮の境内に入ると人は大勢でも何か神聖な空気を感じられて身の引き締まる思いがありました。事前の学習で知ったのですが、伊勢神宮では個人的なお願いはしてはいけないそうです。本来天皇だけが参拝を許され、国の繁栄のみを祈念する社だそうです。そこでは、国全体や社会全体についての祈りをささげるのであって、自分の健康や家族の安寧を祈ってはいけないそうです。しかし、そうした要望にもこたえる場所はあって、別宮では個人のお願いをしてもいいそうです。伊勢神宮本体よりも、個人のお願いをする別宮の方が混雑している様を見ると、人間の現実主義というか欲望を垣間見たような気がしてなにか滑稽でした。かくゆう私も別宮でしっかり家族ならびに皆さんの健康を祈念してきてしまいました。

伊勢神宮に行って驚いたことは、これが中心的神社なのかと驚くほど簡素であったことです。大きさでいえば明治神宮の方がよほど立派です。無垢の檜で造作された神殿はさほど大きなものでもありませんし、装飾らしいものはほとんどありません。簡素であればある程その存在感が増すという不思議な建物でした。しかし、神宮一帯の敷地は広大でそれ自体が信仰の対象となっているときくと、石や川木々など自然そのものに対する深い思いは感じ取ることができました。そう考えると、すでにそのころの日本人の方が環境に対する意識が高かったとも言えます。自然に感謝し逆らうことなく調和して生活していくことの重要性が感じられる空間でした。人為的なものをさけるためなのか、社殿にはいっさいの防腐的処理はなされていないために、20年もたつと遷宮後の以前の社殿は建物自体苔むし一部は腐食してしまっている状態でした。こうしたところにも、本来の日本人の価値観が象徴されているように思えました。

国際化が進めば進むほど、逆にこうした日本人の自然と調和し質素に暮らしていくと言った、環境への意識の高い暮らしや文化は世界に誇れるものではないかと思えてきました。ひどい大気汚染に悩まされているという某国の報道を見るとさらにその思いが強まります。これまでの日本も、近代化西欧化を目指すあまりに、古来の日本文化を顧みないようになってきていた気がします。最近は日本の文化に対する再評価が一つのブームになっていますが、今回の旅を通じて、表面的な日本趣味を追うだけではなく、古来の日本人の価値観のようなものをもっと知りたいと思うようになりました。